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図書館改造プロジェクト

 日経の連載などではややネガティブに書きましたが、校長としてやりたいことのいくつかは徐々に実現しています。

 「自立学習」は、まず学習規律の徹底をしながら、各担任の先生たちが話し合って作った「家庭学習の手引き」を配布し、意識付けを図っています。自学ノートをがんばっているクラスもあります。



 さて、次の課題は「図書館改造プロジェクト」


 敷津小学校ではもともと「朝読書」が実施され、ボランティアの方の読み聞かせが月に1度あります。ただ、図書館は小規模校の難しさで、整備が後手に回っています。古い本、破れた本がたくさんあり、分類も乱れている状態です。


 大阪市の小学校では、徐々に蔵書をバーコード管理に変える流れがあるので、先日も区の図書主任会にお邪魔してレクチャーを受けてきました。分類に関しては、校区内にある浪速図書館のボランティア養成講座で習い、今度は本の修復のレクチャーに来ていただきます。


 なぜ図書室を充実させたいか、理由は2点あります。



 1つには、「子どもの居場所」の1つになり得るからです。

 小学5年からいじめに遭っていた私は、学校図書館によく籠もっていました。本を読んでいると忘れられるし、人と関わらなくて良かった。読みたい本が次々に見つかり、読んでは返し、読んでは返しと読書を重ねました。中学でも高校でも、図書館は私にとってかけがえの無い場所です。

 小学校の時、名古屋市立科学館の「天文クラブ」に入っていました。星に興味を持ち、クラブの翌日には図書館で星の本を漁り、そこからギリシャ神話に興味を持ち、日本の神話にまで及び……と、果てしなく興味が広がりました。


 イヤなことを忘れる場所、夢中になれるものに出会える場所。
 どんな形でも、子どもにとって「居場所の1つ」にしたいと思っています。 

 そのためには、図書館を開けるための工夫も必要になります。他の学校で実施されている図書ボランティアさんによる放課後開放の実施や、私が開ける日を作ることも視野に入れていこうと思います。



 2つ目は、昔から言われていることで、「読書で語彙力と思考力が育つ」からです。


 意味のわからない語があっても、物語の力で読み進めてしまう。どうしても知りたくなれば、調べる。語彙力が育ちます。また、自分のペースで考えながら読めるのもいいところです。思考力が育ち、世界が広がります。
   
 ネットが普及したことで、接する文字量は圧倒的に増えています。それが読書の代替になるかどうか、その点は難しいところです。私はiPadもiPhoneも持っています。電子書籍で数冊読んでみましたが、簡単に画面が切り替わるため、1つのテキストに対する集中力が切れやすくなります。

 入り口はマンガでも構いません。私は、未だに「学研のひみつシリーズ」を大事に持っていますし、手塚治虫には学校の図書室で出会いました。
 
 自分のペースで読む、想像力を膨らませる、基本的な力を育ててやりたいと思っています。図書室だけに限らず、学級文庫の充実や学校のあちこちに「読書スポット」が作れるといいなぁと考えています。


 さぁ、図書館を変えるぞ!

 
 そう思ってこまめに入っては目についた本棚を整理したり、古い本を出したりしています。そんなある日、図書室の隅からこんなものが……


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 こ、これは……
 見覚えがある……


 目次を開くと「京都府 井筒照美(19)」の文字。


 20年前、初々しい(?)女子大生だった私が書いてコンクールに出した文章が、ひっそり敷津小学校の図書館に眠っていました。

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 このコンクールの文庫本が第1回、2回、3回と並んでいて、とんで私の掲載されている第7回しかなかったのも、何だか運命的です。

 
 自分でも20年ぶりぐらいに自分の文章に再会し、読み直して身もだえしました。若い時の文章って、青臭くて猛烈に恥ずかしい!


 歓送迎会の折、こんな話をしました。


 「『天職』のことを、英語で『Calling』と言うそうです。縁あって、私は敷津小学校に呼ばれて来たのだと思っています」


 自分の旧姓を、ほこり臭い敷津小学校の図書室で見つけた時。
 「うーむ、やっぱり呼ばれていたか……」と思いました。


 その本は、教頭先生が「そんなお宝が!置いといてください!」と言うので、図書室のどこかに隠してあります(笑)。


 夏休みの図書館開放日に合わせて、子ども・保護者の方・地域や卒業生の方も含めた図書館ボランティアを募集します。1時間でも関わっていただいて「いい学校図書館って何だろう?」と考えるきっかけになれば、嬉しい限りです。



《最近の1コマ》


 着衣水泳にはシャワー前にすでにジーンズとパーカーを水着の上に着込んで「どんだけやる気なんですか」とN先生にからかわれました(汗)。日々、学校だからこそ体験できることは子どもと一緒に学んでいます。

 こちらは、4年生の授業で学校に来てくださった消防車。人数が少ない学校のいいところ、全員が放水体験した後に、私もやらせてもらいました。


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 パワーは3階に届くほどの水圧、夏の暑さの中で気分爽快でした!


 消防署の方は「この中から、消防士ってかっこいいなぁと思って一緒に働いてくれる子が出ると嬉しい」とおっしゃっていました。小規模校の小回りの良さを活かして、これからもたくさんのプロに出会ってほしいと考えています。



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 ★敷津小学校ホームページ★

 http://swa.city-osaka.ed.jp/swas/index.php?id=e611307
 着衣水泳の様子が公開されています!

 
 
 
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テーマ : 小学校
ジャンル : 学校・教育

Tag:考えたこと 

プロフィール

山口 照美

Author:山口 照美
前・大阪市立敷津小学校校長。現在は別の形で公教育に関わっています。

大阪市の公募で採用された民間人校長の1人。塾の校長経験を経て起業し、広報代行会社の経営やセミナー講師を11年間務めた後、2013年4月より3年間、校長職を務めました。

介護福祉士の夫と小3の娘、3歳の息子(2016年現在)に支えられ、「経済格差を教育格差にしない」を目標に、企画力と行動力で教育に関わり続けます。

著書『企画のネタ帳』(阪急コミュニケーションズ)『売れる!コピー力養成講座』(筑摩書房)『現代語で読む「たけくらべ」』(理論社)など。

日経DUAL連載中
http://dual.nikkei.co.jp/list.aspx?rid=1436

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