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最後の校長ブログ。

 ご無沙汰している間に、卒業式が終わり、終了式が終わり、そして私は敷津小学校を離れて、行政職に異動となりました。自分でもびっくりの展開です。

 本来なら、4月1日には新たなチーム敷津のメンバーと出会い、入学式の緊張感に新1年生と同じように胸をときめかせ、始業式の担任発表での子ども達のワクワク感を一緒に味わっていたことでしょう。

 「経済格差を教育格差にしない」を目標に、3年間すばらしい仲間と走り続けてきました。

 私はそもそも、校長という目的採用のため、行政へ行くのは想定外でした。しかし、「敷津小で学んだことを、大阪市全体に広げてや!」と、たくさんのエールを他の校長先生・教職員・保護者・地域の方にいただいてきました。

 たった1校、それも3年の見聞が全てとは、思っていません。だからこそ、校長会やさまざまな場で他の学校の話も積極的に聞いてきました。勉強を続けながら、自分にできることを探っていきます。

 心機一転、がんばります!……と言いたいところですが、現場から行政に来た人がみんな陥るように、子どもの声が聞こえない寂しさに落ち込む日々です。

 私の年齢とキャリアで、校長になったことも稀なことですし、こうして教育に別の形で関わることも貴重な機会だと認識しています。これから色んな小中学校を見せてもらい、存分に勉強して、日本の大きな流れである「子どもの貧困対策」に自分のミッションである「経済格差と教育格差の解消」を重ねて、学力の底上げに貢献できればと考えています。できれば、行政と学校と外部団体・地域をうまくつないで、「しきつチャレンジ教室(無料土曜塾)」のような試みを、拡大できればいいなと考えています。




 3年を過ごした熱い地域・浪速区敷津は私にとって故郷のようなものです。昨年9月に立ち上げた「敷津子育てサロン ぽんぽこ」の1ボランティアとして、プライベートで関わる予定です。


 さて、敷津小は、新しい校長先生に引き継ぎました。

 じゃーん!

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 大阪一元気な(!?)走る教頭、糸井利則先生が敷津小校長となりました!
 敷津で7年目を迎える、もはや敷津住民と言ってもおかしくない、堂々たる校長先生です。

 最後の地域の挨拶周りでは、

山口 「新しい校長先生を紹介しにきました~」
地域の方 「新米はんでっか(笑)」
糸井 「二文字変わっただけですが……」

と、ネタのような挨拶が繰り返されました。
新教頭先生は、若い先生です。きっと、敷津小をますます元気にしてくれることでしょう!




 異動が決まり、教頭先生の荷物を校長室に移動するために、私が荷物を出さねばならず必死で荷造り。

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 「リスのように本を溜め込んではったんですね……」と、糸井先生に笑われる膨大な量の本を持ち帰り、家が今も段ボールだらけです。

 離任式は、「納得いかへんわ~…私が糸井先生を去年か今年に送ってるはずやったのに……」とブツブツつぶやきながら。しかも、先に北海道へ行ってしまった先生のメッセージビデオを流すために、講堂でプロジェクターやパソコンのセッティングをやる羽目に。一緒に転任する髙井先生と、

 「なんかおかしくない!?私たち最後までこき使われてるやん!」
 「僕たち送られる方なのに……おかしいですよね!」

 と、苦笑しながら作業しました。

 離任式では、毎年無かったのに、突然「校歌をみんなで歌いましょう!」とピアノ演奏が始まりました。

 ♪山遠く 源はるか……♪

 自分の小学校や中学校の校歌は忘れても、一生忘れない、敷津小学校の校歌。前奏だけで、まるで自分の卒業式のように泣きました。いや、小学校も中学校も高校も、卒業式でこんなに泣いたことはありません。この日は、私の敷津小の卒業式だったのだと思います。

 教職員へのお別れの挨拶では、お別れに作ったフォトブックを配り、こんな話をしました。
いつもは、何も見ないで話すのですが、きっと泣けて何も言えないだろうと思い、書いておいたものです。

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 3年前、教員免許も持たない、担任経験もない、ましてや教頭経験も無い私を、リーダーとして受け入れてくれた皆さんがあっての、今日です。そのフォトブックにあるように、みなさんにとっての「当たり前」が、私には輝いて見えたまぶしい3年間でした

 私の役割は、みなさんが力を発揮できるようアイデアを出し、実行する後ろ盾をすることでした。運動場が見えないのが当たり前、ではなく、モニターをつけるという手があること、専科の先生を時間給で呼んでくること、「やってみよう」「できるやん」の繰り返しの中で、みなさんの中からもアイデアが出てくるようになり、最後の年は根井先生のやさしい日本語プリントや、阪口先生の平和アピールなどを、感心して見守る立場になっていました。

 前例を疑う、調べてみる、やってみる。これからの時代、頭の柔らかい人が世界とつながって仕事をしていく時代です。大人たちのチャレンジ精神が、子どもに必ず響いていくと思います。糸井校長先生のもと、進化し続ける敷津小でいてください。

 毎朝、大国町の階段を昇ると、体に気力がみなぎっていました。みなさんと声を掛け合い、心配しあい、笑いあい、時に泣き、素晴らしい時間を過ごさせてもらいました。同時に、わたしの感傷と関係なく、また新しいメンバーと子ども達を迎え、日々の実践を積み重ねていく皆さんの仕事を心から尊敬しています。

 3年間、ありがとうございました。




 子どもたちや、保護者・地域・教職員のみなさんから、たくさんの温かいメッセージや花やプレゼントをいただき、さびしくも幸せな気持ちになりました。ありがとうございます。

 離任式の前日には、卒業生の1人がガラッと校長室を開け、
 「しゃーないから、高いクッキー買うてきたったで」
と、プレゼントをくれ、校長室の掃除を手伝ってくれました。

 気になるあの子この子が顔を見せてくれ、小さな学校のお陰で子ども達と心をつなげる関係であったことを、改めて感じました。


 卒業式の式辞で、この本の言葉を読み上げました。

はじまりの日はじまりの日絵本ナビ


ボブ・ディランの「Forever Young」を、日本語に訳したものです。

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きみの手が ずっと はたらきつづけますように
きみの足が とおくまで 走っていけますように
流されることなく 
流れを つくりますように

きみの 心のうたが
みんなに ひびきますように
毎日が きみの はじまりの日

きょうも あしたも
あたらしい きみの はじまりの日

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 今の立場は、正直なところ先が見えず、なぜ自分がここにいるのか戸惑うばかりの日々です。厳しい視線も言葉もあります。実際、これからの情報発信はかなり難しくなるでしょう。(今まで話したり書いてきたりしたこと、これから書くことは、あくまで私個人の見解です。所属する組織の見解ではありません)

 それでも、子ども達に伝えた言葉を、試される時です。

「流されることなく 流れをつくりますように」

 異動して一週間ですが、目の前に子どもがいるかいないかの違いだけで、熱い気持ちでハードな仕事を背負っている人達に、たくさん出会いました。

 今までやってきた「公立小の広報支援と後方支援」を、
「大阪の教育の広報支援と後方支援」にできるかどうか。
 
 また、アウェイでの1からの出発です。

 このブログでは、発信できる情報が限られます。
今まで溜めていた本の紹介や、校長時代に伝えきれなかったこと、子育て支援についてなど、ぼちぼち書いてみようと思います。

 まずは3年間、お付き合いいただきありがとうございました。

 PTAの前会長さんに、「校長先生のブログを読むことで、一保護者としての視点だけでなく、学校や教育を見る視点が広がった」と言っていただき、嬉しかったです。多くの方に、読んでるよと言われ、浪速区の校長会では「あれ書いといてよ!」と頼まれる場面もありました。登場した教職員が喜んでくれた時も、書いていて良かったなぁと思いました。

 リスク管理は頭の隅に置きながら、今後も自分の言葉を持ち続けたいと願っています。


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 《掲載情報》

●ビジネス+IT 民間人校長の小学校版「システム改革」と「プロモーション戦略」
 http://www.sbbit.jp/article/cont1/31784
 ※2ページ目以降は会員制サイト(無料)です
 ITの媒体なので、IT活用の内容が多くなっています。

●日経DUAL ママ世代公募校長奮闘記 「自分を活かせる場所へ行け!~卒業生と迷える大人へ~」
 http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=8195
 ※2ページ目以降は会員制サイト(無料)です
 キャリア教育の授業を紹介しました。今の私に、改めて刺さっています。

●産経新聞 4/8 「LINEスタンプでいじめ防止!「陰口はよくない」「ひとりじゃないぞう」 元民間人校長らが発案+漫画家アレンジ」
 http://www.sankei.com/west/news/160408/wst1604080017-n1.html
 応募コメントの中に「美術の授業で取り組み、考える機会になった」という先生の言葉があり、嬉しかったです。このスタンプで防止できると言うより、LINEいじめについて話題にする、日ごろのやりとりを見直すきっかけにする、という効果を狙っています。

●読売新聞大阪版 4/8 「日本語授業 外国人小中生に「分かる」喜びを」
 http://www.yomiuri.co.jp/local/osaka/news/20160408-OYTNT50007.html
 エール学園とのインターンシップが区に広がり、うまく現場が回るかどうかは今後も気に掛けていきます。また、全市で困っている(特に連携する学校がそばに無いケース)の支援も実現すればいいなと思っています。

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 【最近の一コマ】

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 今はスーツにヒールでデスクワークの日々ですが、私の校長時代の冬場はこれが戦闘服でした(笑)。特に3学期入ってからは忙し過ぎて、洗わなきゃ、洗わなきゃと思いながらついに最終日を迎えました。

 校長として年齢も若いので、できるだけスーツ姿を崩さずにいました。

 そうは言っても、追いかけたり抱きかかえたり掃除したりと、汚れる現場でもあります。
 スーツの上に、よくこのウィンドブレーカーを羽織っていました。

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 自分用のほうきとちりとりを買い、掃除の時間によく巡回をしていました。そう言えば、校長になってすぐも、やたら掃除をしていたものです。
 
 ああ、懐かしいなぁ。
 あっという間の、3年だったなぁ。

 この戦闘服を捨てるかどうか迷って、もう一度洗って置いておくことにしました。
 そのうち、マイほうきとちりとりを持って新しい職場をウロウロし始めるかもしれません。
 
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★敷津小学校・公式ホームページ★
http://swa.city-osaka.ed.jp/swas/index.php?id=e611307
小さな学校・大きな家族 新生チーム敷津でLet's Go!

Tag:校長日誌 

プロフィール

山口 照美

Author:山口 照美
前・大阪市立敷津小学校校長。現在は別の形で公教育に関わっています。

大阪市の公募で採用された民間人校長の1人。塾の校長経験を経て起業し、広報代行会社の経営やセミナー講師を11年間務めた後、2013年4月より3年間、校長職を務めました。

介護福祉士の夫と小3の娘、3歳の息子(2016年現在)に支えられ、「経済格差を教育格差にしない」を目標に、企画力と行動力で教育に関わり続けます。

著書『企画のネタ帳』(阪急コミュニケーションズ)『売れる!コピー力養成講座』(筑摩書房)『現代語で読む「たけくらべ」』(理論社)など。

日経DUAL連載中
http://dual.nikkei.co.jp/list.aspx?rid=1436

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